嘲笑(わら)い

 多分 ぼくには
 それだけの力があったのだろう
 多分 ぼくには
 それほどの力がなかったのだろう
   暗いところがよく似合う
   タバコの火さえもまぶしいような
 グラスの氷みんなとけて
 ぬるくてうすいウィスキー
 幸せとか不幸とか
 そんな言葉を思い出す
 右手のひらを額にあてて
 自分自身を笑う夜には
 多分 ぼくには
 それだけの人もいたのだろう
 多分 ぼくには
 それさえも夢だったのだろう
   静かな場所がよく似合う
   ため息以外は聞こえてこない
 レコードの音みんな消えて
 からまわりするプレーヤー
 幸せとか不幸せとか
 そんな言葉を思い出す
 右手のひらを額にあてて
 自分自身を笑う夜には





                    かたかわみちお